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本文へジャンプ 更新日2005年12月24日 

歯周治療

歯周病(歯槽膿漏)は成人のほとんどの方が罹患しています。歯周病の原因は歯垢(プラーク)です。
治すためには歯周病にどうしてなるのか知る必要があります。まずその原因の歯垢は何でしょうか
歯垢とは
左上の写真の歯と歯肉の境目にある白い酒粕のような塊が歯垢です。右上の写真はそれを歯ブラシでかき出し拡大したものです。
これは何か?細菌の塊なのです。1ミリ四方に約100億の細菌がいます。この中にはいろいろ(人や場所によっている細菌の種類、数は違います)な細菌がいて外側にはバリアーのような膜を作って共存しています。
実験で歯周病の方の歯垢をとってネズミに注入すると1週間程で注入したネズミの部分に穴が開きます。それほど細菌の毒素は強いのです。
歯垢除去の効果
歯垢除去の効果
左はひどい歯周病の患者さんの初診時の写真です。上の歯の歯肉が赤く腫れていてさわるだけでもいたそうですし、簡単に出血しそうです。下の歯肉は腫れて歯にそって赤みを帯びています。
この患者さんも歯ブラシをしていなかったわけではありません。歯ブラシの毛先を当てていたのが歯だけでした。そのため数回に分けて歯ブラシで歯と歯肉の境目を当てていただくようにしました。
右上の写真はそれから約2ヶ月後のものですが、上の歯の歯肉は赤みや腫れが無くなり、下の歯肉も締まってきました。
歯ブラシの指導以外で歯周病に関する治療はしていませんのに、このように歯垢を取れれば簡単には歯肉は良くなるのです。      歯ブラシ指導へ
歯周病はどのようなもの
正常な歯と歯周組織
中等度の歯周病 重度の歯周病
正常な歯周組織(左上図)
 正常な状態の歯周組織は歯肉がきれいなピンク色で、引き締まっています。また歯を支える骨も歯の頭と根の境目ぐらいまで存在します。
中等度の歯周病(左下図)
しかし歯と歯肉の境目(健康な場合サルカス、病的に深くなると歯周ポケットと呼びます)に歯垢がたくさん溜まって病原性が強くなると、体の抵抗力が負けてサルカスがはがれて深くなっていきます、もちろんそれに伴って骨もとけていきます。このときの進行速度は人や歯の場所によって違います。恐ろしいことに痛みはないため本人は変化に気がつかないことがほとんどです。
重度の歯周病(右下図)
本人が歯周病に罹っていることを知らずに、これまでと同じようなブラッシングを継続しているとさらに歯周ポケットは深くなり、
歯を支える骨もとけていきます。この段階まで進むと歯肉の腫れや痛み、歯の動揺が出できて本人が気がつくこともあります。このまま放置すればやがて歯はぐらぐらになって痛みを伴い抜けてしまいます。
歯周病の恐ろしさは、
  重度になるまで気がつきにくいこと。
  いったん無くなってしまった骨は再生が難しく(場合によっては可能)現状維持が基本治療の目標
  全身的な病気と関連があること、 心血管疾患や糖尿病の発症のリスクが高い。
歯周病の歯を放置すると
歯周病の歯の末期です。左はレントゲンですが真ん中の歯は根の先の周りまで黒くなっています(レントゲンで何も無いか柔らかいところは黒く映り、硬いところ骨などは白く映ります)根の先のほうまで骨がとけて歯を支える骨はありません。
右が抜けてしまった歯です。根の周りは黒い歯石や歯垢がつき、先は歯肉の一部がついているだけです。
ここまで進行すると助けようがありません。実に恐ろしいことでこんな状態の歯を毎日のように見ている私たちは丁寧な歯ブラシを欠かさないことが当たり前かもしれません。
歯周病の基本治療(治療は原則的に保険の範囲内です)
1.歯周病の状態の診査
 レントゲン、模型、口の中の写真、等と簡単な口腔内診査をいたします。
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2.ブラッシングでの歯垢除去を習得
 歯周病の方は歯周病になってしまっているわけですから、清掃の仕方のどこかに勘違いや誤りがあります。その修正を行っ ていきます。治そうという気持ちがあれば確実に良い方向に向かいます。
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3.精密検査
 歯の一本一本の進行状態を把握するために、一本の歯について周りの歯周ポケットの深さを測っていきます。
 進行が酷いほど痛むので場合によっては数回にわけます。
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4.スケーリング、ルートプレーニング
ブラッシングにより歯垢の除去ができて歯肉が締まってくると、歯石が見えてきます。それをとって歯の根の面をきれいにしていきます。
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5.再評価検査 
今まで行ってきた歯周治療がうまくいっているか3の精密検査と同じことをもう一度行います。3の時には痛みがあった歯に痛みがなくなっていることが多いですね。この時点で歯肉からの出血や深さが3ミリ以下になればほとんど治癒と考えてよいと思います。状態の悪い場合は再度4のスケーリング、ルートプレーニングを繰り返すか、歯周外科に移行します。
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6.歯周外科
今までの治療で治らない歯は、かなり程度が悪いですから、特殊な療法が必要になることが多いです。場合により骨を再生させる手術なども行います。
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7.メインテナンス
歯周病になってしまった歯を長持ちさせるためには、定期的な歯のお掃除とチェックが必要です。
歯周治療を終えた患者さんで10年間ずっとメインテナンスを続けている方は、失った歯は10年間で0から1本です。ところがメインテナンスを続けていなかった方は歯周病が悪化し10年間で10本以上歯を失っております。
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特殊な歯周治療
1自然挺出法
骨縁下ポケットという歯の周りの骨が著しくなくなってしまった歯についての治療法です。
また抜かなければ駄目だと診断された歯に関しても最後の望みとして使えるかどうかの診断にもなります。
外科的なことをしないで、体の治癒力にまかせた保険範囲内の治療です。欠点は期間がかかることです。
左上のレントゲン写真では一番右の歯とその左に詰め物が入っている歯(詰め物は歯の頭のところが一番白く写っているところです)の間の骨が無くなっています。その為奥の親知らず(レントゲンでは右側)を抜いて問題の歯を下の歯と咬まないように削っていきます。そうすると病気のある歯は下に下りていきます。
さらに下に下りてきた歯を削っていくと、骨のなかったところに骨ができたように見えます。実際は歯の挺出に伴って骨が降りてきただけなのです。しかし歯周病の治癒がなされています。
2.GTR法、エムドゲイン
歯の周りの失った骨を再生する方法です。
骨が無くなってしまったところは、上皮(歯肉など)で満たされているため骨が治りたくてもその場所が無いため、一旦その上皮を外科的に取り除き骨ができるのを阻害する組織を人工の膜で入り込まないようにして骨の造成を促す方法がGTR法です。膜の代わりに骨誘導蛋白を骨の無いところに塗布し骨の再生を促す方法がエムドゲインです。
ここでは術式の難しいGTR法を紹介いたします。
左上はひどい歯周病の歯にプローブといって歯周ポケットの深さを測る器具を入れている写真です。
右上図を見ていただくと歯肉に隠れている骨がなくなってしまっている量を深さを測ることによって知ることができます。
右上図をふまえて左上を見ていただくと約8ミリポケットが入ります。歯の根の長さは10ミリぐらいですから2ミリ程度しか骨が残っていません。かなり重症ですね。
左上の写真の矢印がプローブを入れた深いところです。歯肉を移動していますから歯の周りに骨があるべきなのに、この歯の周りだけ骨がすり鉢状に無いですね。その為悪い歯の根の周りの悪い組織や汚れを掻きだしました。
その後骨が再生しやすいように右図のように人工の膜を設置して4週間程待ちます。
上の写真は4週間待って人工の膜を除去したところです。骨様組織ができているのが矢印のところです。
左上は術前のレントゲン写真です。矢印のさしているあたりが骨がなくなっている一番深いところです。右上は術後約1年後のものですが、左上写真の矢印の位置はほぼ同じですから骨が出来てきているのがわかります。